もったいない

日本DO振興会 理事長、DO料理研究家

鉄鍋ジャンヌダルク 中 山 千賀子

 ふと、日本人にダッチオーブンは、不向きな調理器具なのかもしれないナと思いました。ダッチオーブンの特徴とは正反対で、流行に振り回され「熱し易く、すぐ冷める」日本人。いまだに「世間体」にも縛られて理想の生活を演じている。幸福なフリをしている。古代日本の農耕民族の「村社会」のDNAか? 村八分を恐れ、「みんなと同じ」を好みます。前置きが長くなりましたが、現在の「ダッチオーブン」を取り巻く環境をひと言で表現すると「もったいない」に尽きます。

ひと頃のDOブームでは、お陰様で著書も多く出版し、新聞、雑誌、テレビにも頻繁に出していただきました。

  私が主宰する、日本で最初の、本格的会員制ダッチオーブン料理教室「アルカディア」にも、大勢の熱心なDO愛好家が全国から集まりました。それこそ横浜の自宅で行う毎月のお教室に、新潟県や石川県、山口県からも、泊まりがけで通ってくる程でした。最近、日本DO振興会のイベントや、企業、自治体主催のセミナーへ参加した人が、ダッチオーブン料理の概念が「変わりました」「レベルが高いのに驚きました」とおっしゃいます。つまり、ダッチオーブン料理とは、ロースト・チキンやチリコンカン、せいぜい凝ってもロースト・ビーフのことだと思っている。レパートリーが少ないから、すぐに飽きてしまう。蓄熱力や圧力鍋としての特性を生かして、何でも料理できる「魔法の万能鍋」の無限の可能性を追求することを、していない。これがなにより「もったいない」。

「アルカディア」創立当時から、多くの人が入会しては消えて行く。しかし、その中でもホンモノの「DO使い」が生き残り研鑽を積んで技を磨き、素晴しい料理を生み出す鉄人に成長してゆく。「鉄鍋理想郷」は別格なのです。更に日本で唯一のプロ集団、全国限定50人の「アルカディア・レンジャーズ」メンバーは、ダッチオーブンの素晴しさを伝える為にテレビの収録、雑誌や新聞等で活躍しています。つまりDO界も「格差社会」が広がっているんです。折角ダッチオーブンを手に入れても、年に数回雛人形のように、夏休みのキャンプの時に引っ張り出して使うだけ。あとは物置や押し入れに入れたまま忘れ去られています。これは相当に「もったいない」。

当然、無敵の「ブラック・ポット」にはほど遠い、鉛色の哀れな姿で錆もみられ、錆びると益々面倒で、いよいよ「死蔵」され、ダッチオーブンの嘆きが聞こえてきます。また驚くことに、かなり多くの人が自分のダッチオーブンが、黒くなって「一人前」の鉄鍋になっていると「勘違い」しています。ただ単にススケているだけの場合が多いのには、笑えます。ブラック・ポットに育てるのには、毎日使っても5~6年はかかります。もっと驚く事に、自分がダッチオーブン料理の「達人」だと勘違いしている人が多い事です。誰にでも、早く、簡単に料理ができるのが、ダッチオーブンの特徴です。上手に料理を作ったのは鉄鍋なのに、自分は上手いと勘違いして、ダッチオーブン料理はマスターしていると思い込んでいる。だから飽きて止めてしまう。また、ダッチオーブンを使い始める時に、自己流でやりたがる人が多いのも不思議だ。折角パーフェクトなダッチオーブン料理の本があるのに、活用しないのは「もったいない」。

本来、ダッチオーブンのルーツはアメリカ開拓時代に、移民達がキッチンで使っていました。その豆のようにツルンとした姿から「ビーン・ポット」と呼ばれ、孫子の代まで大切にされていました。

私は、毎日家庭のキッチンでダッチオーブンを使いこなしている人達の事を「ビーン・ポッター」と名付けました。

「魔法の万能鍋」をもっと毎日使いましょう。しまっておくのは、あまりにも「もったいな~い」。